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【旧】知見集

知見集とは?

『知見集』は、地域に新しいモビリティサービスの導入を果たすべく、実証試験から社会実装へと至る過程で、議論に上がりやすい検討テーマについて、ポイントや事例をまとめたものです。

『知見集』には「令和元年度版」「令和2年度版」「令和3年度版」の3つがあります。「令和元年度版」では検討プロセスに即して、「令和2年度版」では政策課題に即して、「令和3年度版」では施策立案・実証実験実施・社会実装の各ステップにおける取り組みの進み方について、知見をまとめてあります。

ぜひ新しいモビリティサービスの活用を検討する幅広い方々に読んでいただき、社会実装の促進に活用いただければと思います。

知見集(令和3年度版 取組の進め方編)

本資料の狙い

アンケート調査の結果、スマートモビリティの取組みに関する情報収集が課題となっていることが分かりました。

そこで本資料では、地域課題の解決に向けスマートモビリティに取り組む様々な主体への情報提供を目的に、施策立案・実証実験実施・社会実装の各ステップにおける検討のポイントや参考となりうる事例などを簡潔に整理しました。

本資料は、実際にスマートモビリティに取り組まれている自治体や企業の担当者の皆様の、スマートモビリティに関する情報収集についての生声を元に、各ステップにおいて真に重要なポイントを抽出し、可能な限り簡潔に表現するよう意識し作成いたしました。

加えて、スマートモビリティに関する技術やサービスの開発等は日進月歩のため、最新の取組や動向を日頃からご確認いただくことが、取組みを検討する上で重要となります。

単語を登録しておくと自動で関連情報を収集できる「アラートサービス」等を活用いただき、最新の情報をご確認いただければと思います。

本資料の活用法

◆ 自治体担当者の場合
地域の課題に即した新しいモビリティサービスの選択からサービス設計、具体的な実証実験の企画・実施、社会実装に至るまで、新しいモビリティサービスに関する取組全般を進める上で参考としてお使い頂ければと思います。

よくあるお悩み 本資料の使い方例
高齢者に移動の足を提供したいが、どんな手段があるのか分からない ・参考ページ: 「1. 施策立案
・エリア特性・課題解決法の対応表より、自身の自治体において実現可能な施策を導出
・ぺルソナ分析例を参考に、対象とすべき利用者像を明確化
公共共通に関する財政支出が大きく、なんとかしたい
取組内容は決まったが、実証実験はどうやって進めたら良いのだろう ・参考ページ: 「2. 実証実験実施
・活用可能な支援スキームを確認し実証予算を確保
・体制例を元に関係者と調整し、実証実験に向けた座組を構築
・利用促進施策例を参考に、住民特性を踏まえた取組を企画
どうやったら住民は実証実験に参加してくれるだろうか
実証実験では、システム費用が過大で事業として成立しない結果になった ・参考ページ: 「3-1. 社会実装」,「3-2. 社会実装
・システム導入パターンを元にシステム水準を見直し
・行政内連携や民間事業者との連携例を元に持続可能なビジネスモデルを検討
・人材育成実施例を元に教育機関等との連携を検討
自治体・交通事業者に閉じない実現方法はないだろうか

 

◆ 公共交通事業者の場合
自社のサービス向上に向けた具体的な取組や新しいモビリティサービスに関する実証実験の企画・実施、そしてサービスの実現に至るまで、取組全般を進める上で参考としてお使い頂ければと思います。

よくあるお悩み 本資料の使い方例
利用者も減り従業員も高齢化している。より良いサービスはないものか ・参考ページ: 「1. 施策立案
・エリア特性・課題解決法の対応表より、自社において実現可能な施策を導出
・ぺルソナ分析例を参考に、対象とすべき利用者像を明確化
MaaS等に興味はあるが、何をしたら良いか分からない
取組に適応・申請可能な事業はないだろうかa ・参考ページ: 「2. 実証実験実施
・活用可能な支援スキームを確認し実証予算を確保
・体制例を元に関係者と調整し、実証実験に向けた座組を構築
・利用促進施策例を参考に、想定利用者の特性を踏まえた取組を企画
実証実験をしてみたいが、行政とはどう連携すれば良いだろうか
サービスを継続していきたいが、自社単独では難しい ・参考ページ: 「3-1. 社会実装」,「3-2. 社会実装
・システム導入パターンを元にシステム水準を見直し
・福祉予算の活用や民間事業者との連携例を元に持続可能なビジネスモデルを検討
・人材育成実施例を元に教育機関等との連携を検討
交通に閉じず他事業者と連携して持続性を高めたいが、方法が分からない

 

◆都道府県の交通担当者、都道府県・自治体のIT・DX担当者の場合
本資料を活用し基礎自治体・交通担当部署等との勉強会を開催するなど、新しいモビリティサービスに関する理解醸成や、具体的な案件組成を進める上でお使い頂ければと思います。

よくあるお悩み 本資料の使い方例
広域の交通担当・DX担当として、交通×DXで何ができるか知りたい ・参考ページ: 「1. 施策立案
・エリア特性・課題解決法の対応表より、課題に応じ実現可能な施策を確認
・サービス設計時のペルソナ活用例を確認し、施策と併せて基礎自治体等に共有
MaaS等に関する地域の理解を深めたい
実証実験の実施に際し、基礎自治体・交通担当をサポートする方法としては何があるだろうか ・参考ページ: 「2. 実証実験実施
・活用可能な支援スキームを確認し、都道府県で実施しているものを含めて実施主体に共有
・体制例を元に必要とされるプレイヤーを紹介
・利用促進例を元に実証実験の広報をサポート
社会実装に際し地域が悩んでおり、力になってあげたい ・参考ページ: 「3-1. 社会実装」,「3-2. 社会実装
・交通サービスの維持に向けた人材教育例を元に。人材育成事業を広域で検討
・データを活用した他事業実施者との連携例を元に、都道府県スケールでの事業を構想
広域データを活用して交通サービスをより良くできないだろうか

1. 施策立案

成功の
ポイント
  • 住民の具体的な不満や意見を起点にソリューションを選ぶと、効果的かつ持続する施策になります
  • 交通分野の財政支出を定量的に把握すると関係者間で課題の理解が進み、目標設定も容易になります

1-1. 公共交通の持続可能性向上(サービス水準・収益の向上やコスト削減)に向けた施策立案に当たっては、対象となるエリアの特徴(人口規模や密度、担っている役割など)と想定している解決の方向性を踏まえ、適切な施策を選択することが重要となります。

表:エリアの特徴・課題解決の方向性別の施策例
対象エリア
人口密集地・交流活性化地区 郊外や外周部
課題解決
方向性
(テーマ)
(A)他の移動との重ね掛けによる効率化 •福祉輸送との連携 •貨客混載・客貨混載
•福祉輸送との連携
(B)モビリティでのサービス提供 •移動販売 •移動診療の活用
(C)需要側の変容を促す仕掛け •ダイナミックプライシングの導入 •定額(乗合)タクシーの導入
(D)異業種との連携による収益活用・付加価値創出 •地域の異業種事業者からの広告費用等の活用 •地域の異業種事業者からの協賛金等の活用
(E)モビリティ関連データの取得、交通・都市政策との連携 •モビリティデータを活用した交通再編 •健康データを基にした福祉関連部署との連携・予算活用

 

1-2. 新しいモビリティサービスに関する施策を立案する際には、サービスの利用者像を予め詳細に設定・イメージしておくことが重要となります。また、実際には上記想定と、実証実験実施時・社会実装時の実際の利用者との間には少なからずズレが生じます(下表参照)。サービスの利用拡大に向けては、このズレを踏まえサービス水準等を柔軟に変更していくことが重要となります。

表:提供者・利用者間でズレが発生しやすい項目
項目 具体例
町外への移動ニーズ •町外の買い物に求めるもの
•町外への買い物頻度
•町外のコミュニティ
町内完結の生活パターン •町内ですべての買い物等を解決したいというニーズ
•町内への買い物頻度
住民間の関係性 •買い物等の送迎移動を頼むことへの抵抗
•地域の一体感の継続のための移動の存在
•地域の目によるタクシーの利用への消極性の増加
図:サービス利用者検討の例(中山間地域における移動サービスの検討)
実施者インタビューからの想定利用者(81歳女性)

  • 週に1回,町内で食材や日用品の買い物.生協の宅配サービスも併用.月2,3回,町外へ行って,衣類・生活雑貨の買い物や病院に通院.用事を済ませる外出のみで出かけたついでに何かするという移動はない.
  • 近くの移動は,運転免許を持っている夫に頼るが,高齢の夫の運転では危ないので,遠出はご近所さんにお願いして車を出してもらう.
  • ご近所さんに頼めないときは,バスを乗り継いで町外へ出かける.足腰が弱くなり,バス停まで行くのも一苦労.
  • タクシーは,コストや周囲の目(贅沢をしていると思われる)が気になり,積極的に利用できない.
  • タクシーを使うことで,一人で自立した生活ができて,送迎する側とされる側の双方の負担を軽減したい.また,買い物や通院だけでなく,地域活動への参加や新しい生活の楽しみが増えることも期待
住民インタビューからの移動実態(81歳女性)

  • 週に1,2回,町内で食材の買い物.店頭で自分の目で見て選んで買いたいが,品揃えが十分でないため,生協の宅配も利用.また,週1回来る魚屋の移動販売も利用しているが,利便性よりも地域や人との付き合いとして利用.月に1回,町外へ日用品の買い物や通院で行く.町内の電気屋や個人商店にも定期的に通い,いつでも頼れる関係づくりをしている.
  • 基本的に夫の運転で移動し,都合が合わないときは,乗せていってくれる人から誘われない限りはバスで移動.
  • タクシーは,コストよりもサービス範囲や営業時間の制約から利用しにくい.タクシーのお迎えはオンタイムに来てほしく,先に迎えに来られると慌てて急ぎ足になり,転ぶことが怖い.また,タクシーを利用していることを周りに見られたくない(頼ってくれていないと思われる)
  • 友達と集まったりちょっとした時間を過ごせるカフェのような場所がない.
  • 町外へは,習い事,温泉,四季折々の景色を楽しむような,生活を豊かにする外出を気軽にしたい.

2. 実証実験実施|予算確保、体制構築、認知・利用促進

成功の
ポイント
  • 国の支援スキーム等を上手く活用して、自身の課題と照らし合わせながら実績のある他の取組を参照すれば、実証実験を早期に企画し実行できます
  • デジタル技術等も踏まえた地域交通の新しい姿を模索する際は、各分野の有識者を巻き込むことも有効です
  • 投資を抑えつつも、当初のねらいが正しいかを判断できる規模の実験ができると、社会実装に近づきます

2-1. 国等の支援スキームを活用することで、実証実験や社会実装に向けた予算を確保し、かつ早期の実現を図ることが可能となります。

表:各府省庁における支援スキームの例
【スマートシティ関連】
内閣府 ✓ 未来技術社会実装事業
総務省 ✓ 地域課題解決のためのスマートシティ推進事業
経産省 ✓ 地域新MaaS創出推進事業
国交省 ✓ 日本版MaaS推進・支援事業
✓ 国土交通省スマートシティ実装化支援事業
【地方創生関連】
内閣府等 ✓ デジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ)

 

2-2. 実証実験を進める上では、交通行政を担う自治体、実際の交通事業を担う交通事業者、そして両者を分析・実行面でサポートする主体が連携して実証実験を進める体制を構築することが望ましいと考えられます。

表:実証実験時の体制例
自治体名 参画主体 役割


公益財団法人 室蘭テクノセンター 全体調整・実証運営・報告書とりまとめ
室蘭市 全体調整・実証運営・政策評価・人材育成・報告書とりまとめ
国立大学法人 室蘭工業大学 実証分析・考察・評価・人材育成
パナソニックITS株式会社 相乗りシステム提供・運営・人材育成
WILLER株式会社 オンデマンドシステム提供・運営
室蘭ハイヤー協同組合
(金星室蘭ハイヤー㈱・室蘭日交タクシー㈱・室蘭つばめ交通㈱・
札幌交通㈱本輪西営業所)
車両運行
道南バス㈱・北海道中央バス㈱ 車両運行
日鉄興和不動産㈱室蘭事務所・スーパーアークス中島店・
白鳥台ショッピングセンター
サービス連携・店舗協力

 

2-3. 実証実験を進める上での利用促進・想定利用者への周知においては、自身の将来的な移動課題を想像してもらうこと、移動体験と楽しいといった感情面と紐づけるような仕組みを取り入れることが有効と考えられます。

上記を通し、地域住民が新しいモビリティサービスを「自分たちのもの」としてアイデンティティを持てるようになることで、地域内の利用のきっかけの増加、さらなるモビリティサービスの改善に向けた好循環が生まれます。

新しいモビリティサービスを使っていただくには、そのサービスで利用者の移動可能性が高まることと、利用者の行動変容が重要になります。行動変容において参考すべきモデルとして、下記が挙げられます。

3-1. 社会実装|行政・交通事業者主体の事業モデル構築

成功の
ポイント
  • 実証実験の内容や体制に縛られること無く、導入技術・サービスの水準や自動化・システム化投資の合理性を改めて評価して、持続可能な事業モデルを再検討・構築することが事業性に大きく影響します

3-1-1. 公的補助を要するモビリティサービスの導入にあたっては、自治体担当者が地域に必要なサービスを見極め、サービスの企画・実施体制の構築・周知及び利用促進を主導し、社会実装までの道筋を描くことが望ましいと考えられます。

必要なシステムには、①既存パッケージ導入、②独自で作り込み、③システムを使わず運行の3パターンあるが、実証結果の検証を踏まえ、②・③も含めた地域によって持続可能な事業モデルを構築することが重要となります。

表:地域におけるシステム導入のパターン
パターン メリット デメリット
①既存パッケージ導入 ・ベンダーにノウハウの蓄積もあり、導入が容易
・人口密度が高く利用者も多い地域では効率化の幅が大きい
・システム費用が嵩み予算増
・人口密度が低く利用者も少ない場合は効率化の幅が小さい
・利用者や交通事業者にシステム研修が必要
②独自で作り込み ・より地域のニーズに即したUI・UXを設計可能
簡易なものであれば安価に導入可
・システム費用が嵩み予算増
・ベンダーと会話し、要件定義ができるDX人材が必要
・利用者や交通事業者 にシステム研修が必要
③システムを使わず運行 システム費用及びシステム研修が不要 ・従来通り、人の手で業務を回す必要がある(人手による業務フロー改善)

3-1-2. モビリティサービスの提供は、地域住民の外出率の向上やそれによる精神的・身体的健康の増進等、医療・福祉面でも効果を発揮することが明らかになっています。

そのため、モビリティサービスを公共交通施策としてだけではなく福祉施策としてとらえることで、予算面での制約を緩和し、持続可能性を向上できる可能性があります。

入間市ではデマンド交通サービスを健康促進施策としてリハビリサービスと組み合わせて要支援・要介護者に提供し、その効果を検証する実証実験が行われ、次年度以降の福祉予算の活用が検討されています。

 

3-1-3. 地域における持続的・自立的なサービスの維持・改善を行っていく上では、それを担う人材の育成もまた重要となります。

人材育成の具体的手法としては、例えば自治体によるスキル研修の実施や、大学などの教育機関と連携(学生たちとの地域課題の共有・解決策の共同検討、実証実験の共同実施)などが考えられます。

3-2. 社会実装|他事業実施者と連携した事業モデル構築

成功の
ポイント
  • モビリティサービスの運賃を低く抑える地域も多く、旅客数の増加が事業性に大きく影響しない場合もあります
  • 交通分野に閉じず、地域の他事業実施者(商業・モビリティ関係プレイヤー、物流等)にも協業を働きかけることで、データ活用による新しい付加価値の創出や他分野の負担圧縮につながる機会を増やせます

3-2-1. アプリ利用者の移動データと交通関連データ、商業施設データを活用することで、商業施設の収益向上や公共交通の利用促進などが図れ、結果として、地域活性化や交通事業者・自治体の公共交通維持の負担軽減が見込まれます。

 

3-2-2. カーメーカー・ディーラーの保有するモビリティデータや、モビリティサービスの利用者データを活用し、利用実態やニーズに応じて地域公共交通やカーシェアリング等のサービスを改善することで、公共交通の収益改善や外出機会の増加が見込まれます。

 

3-2-3. 物流業者に交通関連データを提供し、物流事業者が抱える非効率地域の配送を地場の交通事業者にアウトソース(貨客混載)する仕組みを構築することで、公共交通の稼働率の向上、自治体負担(補助金等)も軽減することが見込まれます。

知見集(令和3年度版)は以下のリンクからダウンロードできます。
新しいモビリティサービスの社会実装に向けた知見集 (令和3年度版 取組の進め方編) 社会実装に向けた知見集 (令和3年度版 取組テーマ編)

知見集(令和2年度版)

取り扱うテーマ

・「令和2年度版」では、令和2年度「地域新MaaS創出推進事業」におけるテーマ・政策課題に対応した実証実験の内容・結果を参考に、取り組みのアイデアや座組、進め方、成功のポイントなどを整理しています。

・採択地域と実施した取組・テーマ類型・対応政策課題は以下の通りです。

知見の具体内容

・テーマ・政策課題ごとに、地域での実証を通じて見えてきた解決策を知見として整理しています。

※あくまで先進パイロット地域で実証を行った実例であって、その効果は取組を実施する条件により変わる可能性があることにご留意ください。

知見集(令和2年度版)は以下のリンクからダウンロードできます。
新しいモビリティサービスの社会実装に向けた知見集(令和2年度版)

知見集(令和元年度版)

取り扱うテーマ

・「令和元年度版」では、新しいモビリティサービスに係る構想策定からサービス高度化までの検討プロセス別の主要な論点(=チェックポイント)にまつわる知見を整理しています。

知見の具体内容

・論点(チェックポイント)ごとに、採択地域での具体的な取り組み方を事例として紹介しています。

知見集(令和元年度版)は以下のリンクからダウンロードできます。
新しいモビリティサービスの社会実装に向けた知研集(令和元年度 概要版) 新しいモビリティサービスの社会実装に向けた知見集ver1.0(令和元年度 詳細版)